用語集

下痢・便秘・腹痛に関係する疾患名

潰瘍性大腸炎

大腸の粘膜に慢性の炎症が起きて、広い範囲にただれや潰瘍ができる病気。20代を中心に若年者~高齢者まで幅広い年代で発症します。遺伝的な要因のほか、食べ物や化学薬品、腸内細菌などの環境因子、免疫系の異常などいくつかの原因が重なって起きると考えられています。おもな症状は下痢や腹痛ですが、便に粘液が混じったり、血便が出たりすることが多く、発熱することもあります。症状が激しい活動期と比較的おだやかな寛解期があり、これを交互にくりかえします。重症になると大量に下血したり、結腸の一部が太くなる巨大結腸症や大腸が破れて腹膜炎を起こす危険性もあります。
下痢や腹痛などIBSと似た症状があるので、注意が必要です。

参照:山形 和史ほか. 臨牀消化器内科. 2008; 23(5): 557-564.

感染性腸炎

細菌、ウイルス、寄生虫、カビなどの病原微生物が原因となって起きる腸炎。細菌やウイルスが腸管の粘膜に感染することで発症するものと、細菌が作り出す毒素によって発症するものがあります。おもな症状は下痢や腹痛ですが、下血や血便のほか、発熱、吐き気、嘔吐、食欲不振などの症状が出ることもあります。多くは細菌性食中毒やウイルス性腸炎など急性ですが、アメーバ赤痢や腸結核など慢性の感染性腸炎もあります。発症するまでの潜伏期間、症状、経過から、原因となる病原体をある程度推測することができます。
下痢や腹痛などIBSと似た症状があるので、注意が必要です。

牛乳不耐症(乳糖不耐症)

牛乳に含まれる糖質(乳糖)を分解する酵素が腸内に不足している、もしくはないために、牛乳を飲んだときにうまく消化・吸収できず、おなかがゴロゴロ鳴ったり、下痢や腹痛、おなかの張りを起こす病気。生まれつきの体質的な原因のほか、大人になってから発症したり、消化不良などのために下痢をしたのがきっかけで、腸が敏感になり発症したりすることもあります。
IBSと似たような症状がみられますが、牛乳不耐症の場合、牛乳を飲まなければ、症状はおさまります。自覚がない場合も少なくなく、長い間下痢に悩んでいた人が、牛乳を飲むのをやめたら症状がおさまったということもあります。

クローン病

小腸や大腸などの消化管に細長い、あるいはいびつな形の深い潰瘍ができる病気。病変が消化管の外側の層まで達して、ほかの部位と癒着を起こすこともあります。はっきりとした原因は明らかになっていませんが、最近の研究では免疫系の反応異常が原因だと考えられています。10代後半から20代の比較的若い年齢で発症することが多い慢性の病気です。下痢や腹痛、血便のほか発熱、全身倦怠感、食欲不振などがおもな症状です。症状が激しい活動期と比較的おだやかな寛解期をくりかえします。病気が進行すると、出血したり、膿が溜まったりすることがあり、傷がひきつれて腸閉塞を起こすこともあります。
下痢や腹痛などIBSと似た症状があるので注意が必要です。

下痢・便秘

通常、胃から腸にきた消化物には水分が多く含まれており、約20時間以上かけてゆっくりと腸内を通過する間に、水分が腸に吸収され、適度な硬さの便となります。しかし、腸の運動が過剰になり、消化物の通過が速くなったり、腸粘膜からの分泌が増えたりすると、腸で水分を十分に吸収できなくなります。その結果、泥状や液状の便となってしまい、下痢になります。
一方、腸の運動がにぶくなったり、大腸がんやポリープなどが原因で腸が狭くなって通りにくくなったりすると、消化物が腸内に長時間とどまります。その結果、消化物の水分が腸に吸収されすぎて硬い便ができるため、便秘になります。

痔疾(じしつ)

以下の3つの肛門の病気の総称。IBSで下痢や便秘をくりかえしていると、引き起こされることもあります。

  1. 痔核(じかく)

    肛門や直腸下部の血流が悪くなり、この付近の静脈がコブのように腫れた状態。一般には「いぼ痔」と呼ばれます。肛門にできる「外痔核」と内側の直腸にできる「内痔核」があります。外痔核は急激にできることが多く、激しい痛みが起きます。内痔核は痛みがないこともありますが、肛門から痔核が脱肛(だっこう)することがあります。

  2. 裂肛(れっこう)

    排便時にいきみすぎることが原因で、肛門の上皮が裂けた状態。一般には「切れ痔(じ)」と呼ばれ、出血や強い痛みなどの症状があります。慢性化すると深い潰瘍ができ、排便が困難になります。

  3. 痔ろう

    肛門の周囲に痛みや腫れがあり、膿がじくじくと出続ける状態。肛門の少し奥にある肛門腺が感染して発症すると考えられています。

大腸ポリープ/ポリポージス

大腸粘膜からキノコのように飛び出た腫瘍のことで、良性、悪性にかかわらずポリープと呼ばれます。消化管の中に100個以上ポリープができると、ポリポージスと呼ばれます。大腸ポリープの約10%はすでにがん化していて、現在がんではなくても将来がん化する可能性のあるものがさらに約10~20%あることがわかっています。発見されたポリープががんであるかどうか、もしくは将来がん化する可能性があるかどうかは、大きさ、形、色調、数などからある程度判断することができます。けれどもそれを確定するには切除したポリープを顕微鏡で検査しなければなりません。ポリープの特徴的な症状は特にありませんが、便秘や血便などの症状が出ることもあります。

大腸がん

大腸の粘膜にできる悪性の腫瘍。日本人の場合、大腸の中でも結腸の末端部分にあるS状結腸や直腸にできる傾向があります。50歳前後から増加し始め、高齢になるほど罹患(りかん)率が高くなります。大腸がんによる死亡率は、1970年代以降増加していて、がんによる死亡の原因では、男性で4番目に多く、女性では1番多くなっています(2013年人口動態統計より)。肥満や飲酒、喫煙などが大腸がんのリスクになるとされています。症状はがんができた場所や進行の程度によって異なります。症状がほとんどないこともありますが、頻度が高いのは血便で、その他下痢と便秘をくりかえす、腹痛、腹部膨満感、残便感、便が細くなるといった症状があります。こうした症状はがんに特徴的なものではなく、IBSなど良性の疾患でも起きるものなので、鑑別するためには大腸内視鏡検査などで確認することが必要です。

大腸憩室(けいしつ)症

憩室とは、管状になっている腸管の内壁の一部が出っ張って袋状になった状態です。大腸の検査をすると10人に1人は見つかるほど、頻度の高い疾患です。食事の欧米化や高齢化にともなって、増加傾向にあります。自覚症状はない場合が多く、検査によって偶然見つかるケースが多いようです。憩室が炎症を起こして憩室炎になっていると腹痛や発熱などの症状が出るほか、出血することもあります。右側の大腸に憩室炎が起きた場合は、急性虫垂炎と症状が似ているので、鑑別が難しいこともあります。憩室炎になり、症状がある場合は治療が必要ですが、そうでない場合は特に治療の必要はありません。憩室炎を何度もくりかえすと便秘や腹部膨満感が続くことがあります。この場合、IBSと症状が似ているので、注意が必要です。

腸閉塞(イレウス)

さまざまな原因によって小腸や大腸で内容物(食べた物)の通過が悪くなったり、完全に遮断されることによって内容物が肛門方向に運ばれなくなったりする病気のこと。原因の1つとして考えられるのが、硬い便や腸石、食べ物のかたまりのほか、がんや巨大なポリープなどの腫瘍が内容物の通過を妨げ、腸内に停滞してしまうことです。あるいは、腸をコントロールしている神経が障害を受け、腸管の運動が低下して内容物が停滞し、蓄積することも原因になります。症状は、便やおならが出なくなる、腹部膨満感、吐き気や嘔吐、腹痛などがあります。腸閉塞になると、全身状態が急激に悪化して死に至ることがあるため、早急に原因をとり除く治療をする必要があります。

神経・ストレスに関係する専門用語

神経伝達物質

脳の中枢神経系において、さまざまな信号や情報を伝える役割を持つ物質の総称。さまざまな種類があり、現在50種類以上が確認されていますが、そのうち働きが比較的明らかになっているものは20種類ほどといわれています。特に精神活動にかかわっている神経伝達物質には、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリンなどがあります。
IBSの症状には、神経伝達物質の1つであるセロトニンが深くかかわっていることがわかっています。

ストレス

外部からの刺激によって心や体に起きる反応やその原因となる刺激のこと。通常はストレスを受けても発散したり休息したりすることで、もとの状態に戻りますが、ストレスが強すぎたり、長期間ストレスにさらされていたりすると、もとの状態に戻れず、さまざまな病気や症状を引き起こしてしまいます。
ストレスが原因となる病気には、うつ病やパニック障害など心の病気のほか、IBSや円形脱毛症、胃潰瘍、偏頭痛、アレルギーなど心身症といわれる体の病気もあります。
IBSはストレスが原因で下痢や便秘をくりかえす病気ですが、抑うつ、不眠、不安感など精神的な症状をともなっていることも少なくありません。

セロトニン

体内の神経伝達物質の1つ。体内にあるセロトニンの約90%は腸内に存在し、残りの10%のうち、80%程度は体内を循環します。残りの約2%が脳の中枢神経に存在し、精神面に大きな影響を与えていると考えられています。
腸内にあるセロトニンは、近年の研究で消化管の働きに作用していることがわかってきました。脳がストレスなどの刺激を受けると、腸の粘膜からセロトニンが分泌されます。それが腸内にあるセロトニンからの信号の受け手である「セロトニン受容体」と結合すると、腸の動きが異常をきたし、下痢や腹痛などの症状を引き起こします。つまりIBSの症状には、セロトニンが大きくかかわっているのです。

セロトニン受容体

神経伝達物質の1つであるセロトニンと結合することで、細胞内に信号を伝達するタンパク連合型受容体。セロトニンやセロトニン受容体は、脳内のほか腸内にも存在しています。
脳がストレスなどの刺激を受けると、腸の粘膜からセロトニンが分泌され、それがセロトニン受容体と結合すると、腸の動きが異常をきたし、下痢や腹痛などの症状を引き起こすことがわかっています。セロトニンがセロトニン3受容体と結合するのを防ぐことにより下痢と腹痛をともに改善する働きがあります。

その他

大腸内視鏡検査

肛門から盲腸まで内視鏡を挿入し、戻りながら大腸の粘膜を観察する検査。内視鏡の先端に小型のCCDカメラを装着してあるため、モニター上に大腸内部の画像を映し出すことができます。この検査によって、大腸がんや大腸ポリープ、大腸憩室症、潰瘍性大腸炎、クローン病などさまざまな大腸の病気がないかどうかを確認することができます。異常が認められれば、その場で組織の一部を採取し、精密検査をすることもできます。検査の前には大腸の中をからっぽにするために下剤を飲みます。
IBSが疑われるような症状があっても、まずは大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などの大きな病気が潜んでいないかを確認するために、こうした検査をすることが大切です。IBSの場合は、大腸に視覚的に認められる異常はないのが特徴です。

便潜血

消化管の内側からの出血があるかどうかを調べる検査のこと。出血が多い場合は、血便となり肉眼でも確認できますが、少量の場合は肉眼では確認できないため、便潜血の検査が有効です。免疫学的便潜血検査の場合、食事制限の必要がなく、比較的検査をしやすいため、大腸がん検診の1次検査など大腸の病気の有無を調べるためによく行われます。この検査で陽性となった場合は、大腸内視鏡検査や注腸造影検査(大腸をふくらませて外側からX線撮影する検査)などの精密検査へと進みます。ポリープがあってもある程度大きくならないと、便潜血は陽性にはなりません。また、陽性になっても半数は大腸に病気はなく、さらに精密検査へと進んだ人の中で大腸がんと診断されるのは0.1~3%程度です。

腸内環境

腸内にはおよそ1,000種類ものさまざまな細菌が生育しています。健康な人の場合、善玉菌が20%、悪玉菌が10%、残りの70%はいい働きも悪い働きもする日和見菌が占める、というバランスで生育しています。腸内環境とは、こうした細菌のバランスのこと。悪玉菌の増殖を善玉菌が抑えていると、腸内環境が整った状態とされています。よく知られている善玉菌には、ビフィズス菌や乳酸菌があります。腸内環境が悪いと、下痢や便秘といった症状を引き起こします。また、腸内環境を整えることは、生活習慣病の予防になるといわれています。
IBSの治療には、症状を抑えるために腸内環境を整える乳酸菌製剤が使われることがあります。

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